本文へスキップ
stats47 データジャーナル統計で読む地域ニュースPRを含む場合があります

エンジニアがリモートで働ける県・働けない県、テレワーク率は最大6倍差|なぜ地方ほど在宅勤務が広がらないのか (2022)

「リモートワークはもう当たり前になった」——コロナ禍を経て、多くの人がそう感じているのではないでしょうか。ですが、その実感は住んでいる場所によって大きく異なります。2022年のテレワーク実施率は、最も高い東京都が39.8%、最下位の秋田県はわずか6.4%で、トップとの差は約6.2倍にもなります。なぜ都市部と地方でここまで差がつくのか、そしてその差がエンジニアのキャリアにとって何を意味するのか。先に結論を言えば、この6倍差は本人の能力差ではなく「リモート可能な仕事が地元にどれだけあるか」という産業構成の差であり、勤務地を全国に広げれば個人の選択で外せる差です。順を追って読み解いていきます。

NOTE

データはテレワーク(在宅勤務・モバイルワーク等)を実施している就業者の割合(%)です。産業構成や調査方法により数値は変動するため、絶対水準よりも都道府県間の相対的な差に注目してください。

テレワーク実施率ランキングの全体像 — 東京と秋田で約6倍

テレワーク実施率 都道府県ランキング(2022年) 都道府県別テレワーク実施率ランキングを詳しく見る

上位は東京都(39.8%)、神奈川県(30.0%)、千葉県(23.9%)、埼玉県(21.7%)、大阪府(19.7%)と首都圏・大都市圏が並びます。下位は秋田県(6.4%)、島根県(7.1%)、青森県(7.2%)と、東北・山陰の県が続きます。

分布は極端に偏っています。中位(24位)の長野県は10.5%で、富山県・岐阜県も同じ10.5%。上位5県を除けば、多くの県は1割前後の狭いレンジに密集しています。テレワークが「当たり前」なのは一部の都市圏だけで、全国の大多数の県では今なお例外的な働き方にとどまっているのです。

なぜ地方ほどテレワークが広がらないのか — 産業構成の違い

この差の背景には産業構成の違いがあります。テレワークと相性が良いのは、情報通信業・専門サービス業など、パソコンとネット環境があれば成立する仕事です。これらの産業は東京をはじめとする大都市圏に集中しています。逆に、製造業の現場・農林水産業・対人サービスが地域経済の柱になっている秋田のような県では、そもそも在宅で完結する仕事の比率が低くなります。テレワーク率の地図は、各県の産業構成の地図をそのまま写し取った結果だと言えます。

データの分布もこの構造を裏づけています。実施率が8%前後以下にとどまる下位10県(秋田6.4%から岩手・大分の8.0%まで)の顔ぶれは、東北・南九州・山陰に偏っています。いずれも第一次産業や製造業の比重が高く、リモート前提の職種を抱える企業の絶対数が少ない地域です。突出した東京を除けば全国の大半が1割前後に密集している事実は、「都市部 vs 地方」という二項対立よりも、「東京一極」と「それ以外」という構図に近いことを示しています。

WARNING

「地方はテレワークに向いていない」「地方は意識が遅れている」と結論づけるのは早計だ。実施率の低さは「地元企業にリモート可能な求人が少ない」ことの裏返しでもある。つまり、地方在住者がリモートで働けないのは能力や職種の問題ではなく、勤務先の選択肢が地理的に限られているからだ。

京都・沖縄もリモートでは中位 — 「稼げる県」と「在宅で働ける県」は別の地図

地方の中核都市はどうでしょうか。京都府は8位(17.5%)、沖縄県は13位(14.1%)と、全国の中位は上回るものの、東京とは2倍以上の開きがあります。観光・サービス業のウエイトが高い県では、IT人材であってもリモート前提の職場に出会いにくいのが実情です。

ここに、別データとの興味深い対比があります。ソフトウェアエンジニアの平均年収で全国トップに立つのは京都府(2023年・608.4万円)。「稼げる県」の代表格でありながら、テレワーク実施率では8位の中位にとどまっています。年収の地図とリモートの地図は、必ずしも重ならないのです。

ソフトウェアエンジニアの年収ランキングと比べてみる

問われるのは「出社頻度」より「制度の有無」

地方在住エンジニアにとって本当に重要なのは、週何日出社かという頻度ではなく、フルリモートという選択肢が「制度として」存在する企業に身を置けているか、という一点です。制度があれば、結婚・育児・介護といったライフイベントに応じて出社と在宅の比率を自分で調整できます。逆に制度がなければ、どれだけ望んでも在宅は例外的な特例にとどまってしまいます。

テレワーク率という数字の裏にあるのは、そうした制度を備えた企業が各県にどれだけ立地しているかの差です。つまりこれは「地元市場の制約」であって「自分の制約」ではありません。フルリモートの求人は地理的境界を持たないため、勤務地を全国に広げれば、この6倍の地域差は個人の選択で乗り越えられます。

TIP

順位は「県内にどんな求人があるか」を映す指標であって、自分が応募できる範囲ではありません。エンジニア向けの転職サービスなら「フルリモート可」「居住地不問」で求人を絞り込めるため、住む県の順位が低くても選択肢は全国に広がります。テレワーク率を読むときは、自分の居住県の数字ではなく「フルリモート可の求人がどれだけ増えているか」という全国の流れに注目するのがコツです。

まとめ

  • 1位は東京都39.8%、最下位の秋田県6.4%とは約6.2倍差
  • 上位は東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪と首都圏・大都市圏に集中、下位は秋田・島根・青森と東北・山陰
  • 中位(24位)の長野は10.5%で、上位5県を除く多くの県は1割前後に密集
  • 京都8位(17.5%)・沖縄13位(14.1%)と、地方中核都市でも東京とは2倍以上の開き
  • ソフトウェアエンジニア年収トップの京都(608.4万円)がテレワークでは8位=年収とリモートの地図は重ならない
  • 差の正体は産業構成=「リモート可能な仕事が地元にどれだけあるか」。本人の能力差ではなく、勤務地を全国に広げれば個人の選択で外せる

データ出典

  • 総務省「通信利用動向調査」ほか(e-Stat 統計データ、2022年)
  • テレワーク実施率は就業者に占めるテレワーク実施者の割合。全国平均水準や定義は集計方法により変動します