労働時間が最も短いのは意外にも東京、長いのは群馬|大都市ほど残業が少ない構造とは (2024)

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「都会は仕事に追われ、地方はゆったり働いている」——多くの人が抱くこのイメージは、データを見ると裏切られる。2024年の男性の月間平均実労働時間を都道府県別に見ると、最も長いのは群馬県の180時間。対して最も短いのは東京都の170時間で、大都市である東京がむしろ全国47位、つまり全国で最も労働時間が短い。

最長の群馬と最短の東京の差は月あたり約10時間。1か月で丸1日分以上、年間にすれば約120時間——出社日にして15日前後の働く時間が、住む県によって変わる計算になる。「都会=長時間労働」という通念とは逆向きに、しかも東京が最下位という形で出ている。なぜ大都市ほど労働時間が短いのか。本記事ではその構造を、産業構成の観点から読み解く。

NOTE

データは男性の月間平均実労働時間(時間)です。所定内+所定外(残業)を含む実労働時間で、産業構成によって地域差が生じます。労働時間の長短は職種・業種に強く依存するため、県の平均値はあくまで全体傾向を示すものです。

労働時間ランキングの全体像 — 群馬180時間、東京170時間

上位(労働時間が長い)は群馬県(180時間)を筆頭に、青森・福井・岐阜・兵庫がいずれも179時間で続く。一方、下位(短い)は東京都(170時間)が最下位で、沖縄県・秋田県がともに172時間、徳島県・山形県が173時間。全国平均は176時間だ。

中位(24位)の富山県は176時間で、東京・群馬という両端の県を除けば、ほとんどの県は173〜179時間の狭い帯にぎゅっと集まっている。この分布の形そのものが手がかりになる。県の差が大きく開かないのは「どの県も似たような働き方」だからではなく、労働時間を分けているのが県境ではなく、その県にどんな産業が集まっているかだからだ。狭い帯のなかで東京だけが170時間と1段下に外れている事実こそ、産業構成が労働時間を押し下げる典型例である。

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なぜ東京が最下位なのか — 産業構成が残業の出方を決める

東京が170時間で最下位になる背景には、産業構成の偏りがある。東京はサービス業・情報通信業・金融といった、裁量労働制やフレックスタイムが浸透したホワイトカラー職の比率が突出して高い。これらの業種では、働いた時間が「所定外労働(残業)」として時間集計に乗りにくい。みなし労働時間制では実際の労働が何時間でも一定時間として扱われるため、統計上の実労働時間は押し下げられる。

逆に労働時間が179〜180時間で並ぶ群馬・岐阜・福井・兵庫は、いずれも製造業の集積地という共通点を持つ。製造現場は始業・終業が明確で所定内労働がしっかり積み上がり、繁忙に応じた所定外労働もタイムカードを通じて時間として明確に発生する。同じ「忙しさ」でも、製造業では統計に乗り、東京のホワイトカラー職では乗りにくい——この計上のされ方の違いが、東京を1段下に押し下げている正体だ。

ただし下位には秋田・沖縄・徳島・山形といった、製造業比率がそれほど高くない地方県も混じる。労働時間ランキングは産業構成だけでなく、地域の雇用形態(短時間勤務の比率など)も映す複合的な指標であり、「県の豊かさ」や「忙しさ」をそのまま測る指標ではない。

WARNING

「県の平均が短い=自分の残業が少ない」とは限らない。労働時間は業種・企業・職種で大きくばらつく。とくにIT業界はプロジェクトの繁忙や障害対応で個人の残業が平均を大きく上回ることがあり、みなし残業・持ち帰り・サービス残業は統計に表れにくい。とくに東京のように統計上の実労働時間が短く出る地域ほど、「数字に乗らない労働」が隠れている可能性に注意したい。

労働時間は「給与に換算されない報酬」として比較する

この東京の数字が示す実務的な教訓は、働き方を年収という額面だけで測ると、残業という重要な変数を見落とすということだ。同じ年収500万円でも、月170時間で得る人と月200時間で得る人とでは、1時間あたりの報酬に2割近い開きが生まれる。残業が積み重なるほど、見かけの年収は維持できても「時間あたりの豊かさ」は静かに目減りしていく。残業の少なさは、給与明細に載らないが確かな報酬である。

だからこそ仕事を選ぶときは、年収と「想定残業時間・みなし残業の有無・年間休日数」をセットで並べたい。とくにエンジニアは需要が高く労働条件を選びやすい職種なので、額面を下げずに残業の少ない環境へ移れる余地が大きい。ただし求人票の「月平均残業◯時間」は実態と乖離しがちなので、気になる企業はエンジニア専門の転職エージェントを通じて残業実態や有給取得率まで確認しておくと、入社後のギャップを避けられる。

TIP

年収と労働時間はセットで比較する。「想定残業時間」「みなし残業の有無」「年間休日数」を年収と同じ重みで並べると、その仕事が本当に割に合っているかが見えてくる。

データ出典

  • 厚生労働省「毎月勤労統計調査」ほか(e-Stat 統計データ、2024年)
  • 月間平均実労働時間(男性)は所定内労働時間と所定外労働時間(残業)の合計。産業構成により地域差が生じます
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