2023年度の都道府県別耕地面積比率は茨城県が26.1%で全国1位、東京都が2.8%で最下位となりました。上位には関東地方の県が多く含まれ、下位には山間部や都市部の都県が集中しています。耕地面積比率は地域の農業生産基盤を示す重要指標で、地域の土地利用と将来の農業政策を検討する上で欠かせないデータです。
概要
耕地面積比率は各都道府県の総面積に対する耕地(田・畑・樹園地)の面積が占める割合を示す基本的な農業統計指標です。この指標は地域の農業生産能力と土地利用の特徴を表し、食料自給率向上や農業政策の基礎データとして重要な役割を果たしています。また、国土の有効活用状況を把握する観点からも、都市計画や農業振興策の立案に欠かせない情報となっています。
2023年度のデータでは全国平均が約10%となり、都道府県間で大きな格差が存在しています。関東平野を中心とした平坦地で高い数値を示す一方、山間部や都市化が進んだ地域では低い傾向が見られます。
地図データを読み込み中...
上位県と下位県の比較
上位5県の詳細分析
茨城県(1位)
茨城県は26.1%の耕地面積比率で全国1位を獲得し、偏差値79.6という突出した数値を記録しました。県土の4分の1以上が農地という驚異的な数値は、平坦な地形と温暖湿潤な気候、豊富な水資源に支えられています。野菜生産量は全国トップクラスで、メロン、レンコン、白菜などの生産日本一を誇り、首都圏への食料供給基地として重要な機能を果たしています。農業産出額は全国2位の規模を誇り、大規模経営と技術革新による効率的な農業が展開されています。
千葉県(2位)
千葉県は23.3%の耕地面積比率で2位にランクインし、偏差値74.1を記録しています。房総半島の温暖な気候を活かした多様な農業が特徴です。落花生生産量日本一をはじめ、人参、大根、ほうれん草などの野菜類で高い生産量を維持しています。東京湾沿岸部の都市化地域を除く広範囲で農業が営まれ、特に北総台地では大規模な畑作農業が発達しています。花卉栽培も盛んで、切り花類の生産では全国上位の地位を占めています。
佐賀県(3位)
佐賀県は20.4%の耕地面積比率で3位となり、偏差値68.5を達成しました。九州地方では最高位を記録し、佐賀平野の肥沃な土壌と温暖な気候条件により、米作を中心とした農業が発達してきました。県土面積が比較的小さいことも耕地面積比率の高さに寄与し、効率的な土地利用が実現されています。近年では高品質米の生産や施設園芸による野菜生産にも力を入れ、農業の高付加価値化を推進しています。
埼玉県(4位)
埼玉県は19.2%の耕地面積比率で4位にランクし、偏差値66.1を記録しています。都市近郊農業の成功モデルとして注目されており、関東平野の一部を占める立地条件を活かし、首都圏という巨大消費地に近い利点を最大限に活用しています。小松菜、ほうれん草、ねぎなどの軟弱野菜の生産が盛んで、新鮮な農産物を短時間で消費者に届ける体制が確立されています。農業技術の革新と経営の効率化により、限られた農地での高収益農業を実現しています。
栃木県(5位)
栃木県は18.8%の耕地面積比率で5位となり、偏差値65.3を達成しました。米作から畜産まで多様な農業が展開されており、いちご「とちおとめ」の生産量日本一をはじめ、二条大麦、干瓢(かんぴょう)などで全国トップの生産量を誇ります。那須野が原の開拓により拡大した農地では、大規模な畜産業も発達し、農業産出額では全国上位に位置しています。中山間地域から平野部まで多様な地形を活かした特色ある農業が県全体で営まれています。
下位5県の詳細分析
山梨県(43位)
山梨県は5.2%の耕地面積比率で43位となり、偏差値38.7を記録しています。山間部が県土の大部分を占める地形的制約が数値に反映されています。富士山麓や南アルプスなどの山岳地帯により平坦な農地が限られるものの、甲府盆地では果樹栽培が盛んです。ぶどうや桃、すももなどの生産では全国トップクラスの品質と生産量を誇り、限られた農地での高付加価値農業を実践しています。標高差を活かした多様な作物栽培も特徴の一つです。
岐阜県(44位)
岐阜県は5.1%の耕地面積比率で44位にランクし、偏差値38.6となっています。県土の約8割を森林が占める地理的特徴が影響しており、飛騨山脈や木曽山脈に囲まれた山間地形により、農業適地は河川流域の平坦部に限定されています。しかし、美濃地方の平野部では米作や野菜栽培が行われ、飛騨地方では高冷地野菜の生産が特色となっています。近年では中山間地域の特性を活かした有機農業や特産品開発にも取り組んでいます。
奈良県(45位)
奈良県は5.1%の耕地面積比率で45位となり、偏差値38.6を記録しています。県土の大部分を占める奈良盆地周辺の山地が農地面積を制約しています。大和平野では古くから稲作が営まれ、歴史ある農業地域として発展してきました。柿、いちご、大和野菜などの特産品生産に力を入れ、品質の高い農産物を首都圏や関西圏に供給しています。観光業との連携による農業の6次産業化も積極的に推進されています。
高知県(46位)
高知県は3.6%の耕地面積比率で46位にランクし、偏差値35.6となっています。四国山地に囲まれた地形により平坦な農地が太平洋沿岸部に限定されています。県土面積に占める森林の割合が全国トップクラスとなる一方、温暖な気候を活かした施設園芸が発達しています。なす、ししとう、みょうがなどの生産量は全国上位を占め、限られた農地での集約的農業により高い農業所得を実現しています。
東京都(47位)
東京都は2.8%の耕地面積比率で最下位となり、偏差値34.1を記録しています。都市化の進展による農地の宅地転用が主要因となっており、多摩地区や島嶼部で農業が継続されているものの、都市的土地利用が圧倒的に優勢な状況です。しかし、都市農業としての役割は重要で、新鮮な農産物の供給、緑地保全、防災機能など多面的な価値を提供しています。江戸東京野菜の復活や都市型農業の新しいモデル構築にも取り組んでいます。
地域別の特徴分析
北海道・東北地方
北海道は14.6%で11位に位置し、広大な面積に対して農地の割合は全国平均程度となっています。しかし絶対的な農地面積は全国最大で、大規模畑作や酪農の中心地として重要な役割を担っています。東北地方では宮城県が17.1%で6位、青森県が15.4%で9位と健闘し、米どころとしての特徴を示しています。秋田県12.5%(16位)、山形県12.2%(18位)、岩手県9.6%(24位)、福島県9.8%(22位)と続き、地形の違いによる格差が見られます。
関東地方
関東地方は圧倒的な強さを見せ、上位5県中4県を占める農業先進地域となっています。関東平野という日本最大の平野部を活かし、茨城県26.1%(1位)、千葉県23.3%(2位)、埼玉県19.2%(4位)、栃木県18.8%(5位)が上位にランクインしています。群馬県も10.0%で21位と中位に位置し、関東地方全体の農業力の高さを実証しています。首都圏という巨大消費地に近接した地理的優位性と温暖な気候が、高い耕地面積比率を支えています。
中部地方
中部地方では山間県と平野県で明確な格差が生じています。新潟県は13.3%で15位と健闘し、越後平野を中心とした米作地帯としての特徴を示しています。愛知県は14.0%で13位、富山県は13.6%で14位と中位に位置する一方、山梨県5.2%(43位)、岐阜県5.1%(44位)、長野県7.7%(33位)など山間部の多い県では低い数値となっています。石川県9.6%(24位)、福井県9.4%(26位)、静岡県7.6%(34位)と日本海側でばらつきが見られます。
関西地方
関西地方では都市化の進展と山間地形の影響で全体的に低めの数値となっています。滋賀県が12.4%で17位と最も高く、琵琶湖周辺の平坦地を活かした農業が営まれています。兵庫県8.6%(29位)、京都府6.4%(39位)、大阪府6.3%(40位)、和歌山県6.6%(37位)は都市化や山間地形の影響で低い数値を示し、奈良県5.1%(45位)は山間部が多い地形的制約が顕著に現れています。
中国・四国地方
中国・四国地方では瀬戸内海沿岸の平野部と山間部で格差が生じています。香川県は15.2%で10位と健闘し、香川平野を中心とした農業が発達しています。岡山県8.7%(28位)、鳥取県9.4%(26位)、徳島県6.6%(37位)、愛媛県7.8%(32位)、山口県7.1%(36位)、広島県6.0%(41位)、島根県5.3%(42位)と中国地方では地形による差が見られます。四国では特に高知県3.6%(46位)は四国山地の影響で最下位レベルの数値となっています。
九州・沖縄地方
九州地方では佐賀県20.4%(3位)が突出して高い数値を示し、佐賀平野の農業力を実証しています。福岡県15.7%(8位)、熊本県14.1%(12位)、鹿児島県12.1%(19位)、長崎県10.9%(20位)、宮崎県8.2%(31位)、大分県8.5%(30位)と続きます。沖縄県は15.8%で7位と健闘し、亜熱帯気候を活かした特色ある農業が展開されています。九州全体では平坦地と山間部の地形格差が数値に反映されています。
社会的・経済的影響
耕地面積比率の地域間格差9.3倍(茨城県26.1%と東京都2.8%の差)は、将来の農業構造と地域経済に深刻な影響をもたらします。高比率地域では農業生産基盤の充実が期待できる一方、低比率地域では農業の持続可能性が課題となっています。
- 農業生産基盤の格差:高比率地域では農業生産力の向上が期待
- 食料安全保障への影響:農業地域の食料供給基地としての重要性
- 土地利用政策の地域特性:各地域の実情に応じた農業支援策の必要性
- 地域経済への影響:農業関連産業の地域経済への貢献度の格差
- 都市農業の重要性:低比率地域での都市農業の多面的機能
対策と今後の展望
耕地面積比率の地域間格差是正には、各地域の特性を活かした農業政策の展開が不可欠です。高比率地域では農業生産力の向上と国際競争力強化、低比率地域では都市農業の多面的機能発揮と地域ブランド化の両立が重要となります。
地域の特性を活かした農業環境の整備や、農地保全策の充実が求められています。特に農地の集約化、都市農業の推進、地域ブランドの確立が耕地面積比率向上の鍵となります。また、地域間の格差是正に向けた国レベルの支援策も重要です。
統計データの基本情報と分析
指標 | 値% |
---|---|
平均値 | 11 |
中央値 | 9.6 |
最大値 | 26.1(茨城県) |
最小値 | 2.8(東京都) |
標準偏差 | 5.1 |
データ数 | 47件 |
2023年度の耕地面積比率データを統計的に分析すると、全国平均値は約10%、中央値は約9%となっています。茨城県の突出した数値により分布が大きく右に歪んでおり、多くの都道府県は比較的似通った比率で農業が営まれていることが分かります。
標準偏差は約6%と比較的大きな値となっており、都道府県間での耕地面積比率のばらつきが大きいことを示しています。四分位範囲は約8%で、上位25%と下位25%の県の間にも相当な開きがあります。外れ値として茨城県が特に顕著で、他の県とは大きく異なる水準を維持しています。
まとめ
順位↓ | 都道府県 | 値 (%) | 偏差値 | 前回比 |
---|---|---|---|---|
1 | 茨城県 | 26.1 | 79.6 | -1.1% |
2 | 千葉県 | 23.3 | 74.1 | -1.3% |
3 | 佐賀県 | 20.4 | 68.5 | -1.0% |
4 | 埼玉県 | 19.2 | 66.1 | -0.5% |
5 | 栃木県 | 18.8 | 65.3 | -0.5% |
6 | 宮城県 | 17.1 | 62.0 | -0.6% |
7 | 沖縄県 | 15.8 | 59.5 | -0.6% |
8 | 福岡県 | 15.7 | 59.3 | -0.6% |
9 | 青森県 | 15.4 | 58.7 | -0.7% |
10 | 香川県 | 15.2 | 58.3 | -1.9% |
11 | 北海道 | 14.6 | 57.1 | +0.7% |
12 | 熊本県 | 14.1 | 56.1 | -1.4% |
13 | 愛知県 | 14.0 | 56.0 | -0.7% |
14 | 富山県 | 13.6 | 55.2 | - |
15 | 新潟県 | 13.3 | 54.6 | - |
16 | 秋田県 | 12.5 | 53.0 | -0.8% |
17 | 滋賀県 | 12.4 | 52.8 | -1.6% |
18 | 山形県 | 12.2 | 52.4 | -0.8% |
19 | 鹿児島県 | 12.1 | 52.2 | -0.8% |
20 | 長崎県 | 10.9 | 49.9 | -1.8% |
21 | 群馬県 | 10.0 | 48.1 | -2.0% |
22 | 福島県 | 9.8 | 47.7 | -1.0% |
23 | 三重県 | 9.8 | 47.7 | -1.0% |
24 | 岩手県 | 9.6 | 47.3 | -1.0% |
25 | 石川県 | 9.6 | 47.3 | -1.0% |
26 | 福井県 | 9.4 | 47.0 | -1.1% |
27 | 鳥取県 | 9.4 | 47.0 | -2.1% |
28 | 岡山県 | 8.7 | 45.6 | -1.1% |
29 | 兵庫県 | 8.6 | 45.4 | - |
30 | 大分県 | 8.5 | 45.2 | - |
31 | 宮崎県 | 8.2 | 44.6 | -1.2% |
32 | 愛媛県 | 7.8 | 43.8 | -2.5% |
33 | 長野県 | 7.7 | 43.6 | - |
34 | 静岡県 | 7.6 | 43.4 | -2.6% |
35 | 神奈川県 | 7.4 | 43.0 | - |
36 | 山口県 | 7.1 | 42.5 | -1.4% |
37 | 和歌山県 | 6.6 | 41.5 | - |
38 | 徳島県 | 6.6 | 41.5 | -1.5% |
39 | 京都府 | 6.4 | 41.1 | - |
40 | 大阪府 | 6.3 | 40.9 | -1.6% |
41 | 広島県 | 6.0 | 40.3 | -1.6% |
42 | 島根県 | 5.3 | 38.9 | -1.9% |
43 | 山梨県 | 5.2 | 38.7 | - |
44 | 岐阜県 | 5.1 | 38.6 | -1.9% |
45 | 奈良県 | 5.1 | 38.6 | -3.8% |
46 | 高知県 | 3.6 | 35.6 | - |
47 | 東京都 | 2.8 | 34.1 | -3.5% |