愛媛のマダイが漁獲量10倍の北海道と産出額で並ぶ理由──養殖特化が変える水産業の稼ぎ方

漁業
養殖
水産業
漁獲量
サーモン養殖

愛媛県の海面漁獲量は約6.5万トンで全国11位。北海道の約87万トンの13分の1にも満たない。しかし漁業産出額では愛媛県が全国3位(約913億円)、北海道が1位(約3,000億円)と、差は3倍強に縮まる。さらに愛媛の養殖産出額だけを見ると655億円で全国1位だ。「どれだけ獲るか」ではなく「何を育てるか」が、水産業の稼ぎを決める時代に変わりつつある。

漁獲量・養殖量の合計──北海道98.5万トンの圧倒

海面漁業漁獲量と養殖収獲量を合算すると、北海道が約98.5万トンで断トツの1位。2位の茨城県(約28.5万トン)の3.5倍にのぼる。

漁獲量+養殖収獲量(上位10県)──青: 漁獲 / 緑: 養殖 北海道 87万t+11.5万t 茨城 28.5万t(養殖0) 長崎 26.2万t+2.3万t 宮城 18.7万t+8.9万t 愛媛 6.5万t+6.4万t(産出額3位) 広島 1.7万t+9.9万t(カキ養殖6倍) 鹿児島 4.1万t+4.4万t(産出額4位) 漁獲量 養殖収獲量
出典:e-Stat 社会・人口統計体系(2022年度)

注目すべきは青(漁獲)と緑(養殖)の比率の違いだ。3位の長崎県は漁獲26.2万トンに対し養殖2.3万トンで漁獲型だが、広島県は漁獲1.7万トンに対し養殖9.9万トンと、養殖が漁獲の約6倍。佐賀県も漁獲0.7万トンに対し養殖5.6万トンでノリ養殖が大半を占める。同じ「水産県」でも漁獲型と養殖型では産業構造がまったく異なる。

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漁業産出額マップ──金額で見ると養殖県が浮上する

産出額で見ると、漁獲量ランキングとは大きく景色が変わる。

漁業産出額 上位5県(2016年度)──漁獲量順位と比較 産出額ランキング 漁獲量ランキング 1. 北海道 3,000億円 1位 2. 長崎県 974億円 3位 3. 愛媛県 913億円 11位↑(マダイ養殖) 4. 鹿児島県 762億円 18位↑(ブリ・カンパチ) 5. 長崎・静岡 330億円〜 愛媛・鹿児島は漁獲量順位より産出額順位が大幅に上昇(養殖の高単価が寄与)
出典:e-Stat 社会・人口統計体系(2016年度)

NOTE

漁業産出額は2016年度のデータ。漁獲量・養殖収獲量(2022年度)とは年次が異なるため、順位に差が生じることがある。

愛媛県は海面漁獲量では全国11位(約6.5万トン)だが、マダイ養殖を中心とする高単価品目で産出額3位に入る。鹿児島県もブリ・カンパチの養殖が強く、漁獲量18位から産出額4位へと大きく順位を上げている。

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養殖産出額が漁獲を逆転した10県──「育てる漁業」が主業の県

産出額ベースでは、10県で養殖産出額が漁獲産出額を上回っている。愛媛県では養殖が漁獲の3.5倍、熊本県では7.5倍、佐賀県では5.2倍だ。これらの県では既に「育てる漁業」が産業の主軸になっている。

主要養殖品目養殖/漁獲 産出額比
広島カキ約6倍
熊本ノリ・アサリ約7.5倍
佐賀ノリ約5.2倍
愛媛マダイ約3.5倍
鹿児島ブリ・カンパチ約1.5倍

養殖業は漁獲漁業に比べて計画的な生産が可能で、労働集約度も異なる。就業者減少が続くなかで、養殖へのシフトは省力化・安定生産の面からも合理的な選択といえる。

TIP

養殖産出額が漁獲を上回った県は既に10県。「一部の特殊な県の話」ではなく、日本の水産業の主流になりつつある構造変化を示している。

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漁業就業者数ランキング──北海道2.4万人を筆頭に減少傾向

漁業就業者数は北海道が約2.4万人で1位。2位の長崎県(約1.2万人)の約2倍だ。全国の漁業就業者数は約15.2万人で、農業就業者(約168万人、2020年)と比べると1桁少ない。漁業就業者は高齢化も著しく、65歳以上の割合が約4割を占めるとされる。

WARNING

漁業就業者の高齢化率は農業を上回る水準で進行している。養殖業は漁獲漁業よりも陸上作業の比率が高く、高齢就業者でも継続しやすい点で、人口動態的にも養殖シフトは必然に近い。

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まとめ──「量」より「単価」が水産業の稼ぎを決める

海面漁獲量・養殖収獲量・産出額の3つの軸から、日本の水産業の地域構造を整理する。

  • 漁獲量では北海道が圧倒的だが、産出額では養殖特化の愛媛・鹿児島が浮上する
  • 養殖産出額が漁獲を上回った県は既に10県。「育てる漁業」は一部の例外ではない
  • 広島(カキ6倍)・熊本(ノリ7.5倍)・佐賀(ノリ5倍)は養殖が主業として確立
  • 漁業就業者の高齢化・減少が続くなか、省力化できる養殖シフトは構造的に続く

データ出典

  • 農林水産省「漁業・養殖業生産統計」(漁獲量・養殖収獲量、2022年度 / 産出額 2016年度)
  • e-Stat 統計表 ID: 0000010103(社会・人口統計体系)