東京都のテレワーク実施率は39.8%。一方、秋田県はわずか6.4%。同じ日本で働いていても、テレワークできるかどうかは住む場所によって6倍以上の差があります。
コロナ禍を経て定着したはずのテレワークですが、その恩恵は全国に均等には広がっていません。47都道府県のデータから、テレワーク格差の実態と構造を分析します。
テレワーク実施率ランキング──上位は大都市圏が独占
出典:e-Stat 就業構造基本調査1位は東京都(39.8%)。2位の神奈川県に約10ポイントの差をつけて突出しています。千葉県・埼玉県と首都圏の4都県が上位を独占し、5位の大阪府以下は20%を下回ります。
一方、下位は秋田県(6.4%)・島根県・青森県と東北・山陰が並びます。10%未満の県は10県にのぼり、いずれも人口規模が小さく第一次・第二次産業の比率が高い地域です。
テレワーク実施率ランキング上位10県と下位10県を比べると、明確な傾向があります。上位は三大都市圏(東京・大阪・名古屋)とその周辺、下位は東北・四国・山陰に集中しています。
NOTE
テレワーク実施率は「ふだんの仕事でテレワークをしている」と回答した雇用者の割合(2022年就業構造基本調査)。自営業者や在宅勤務以外のモバイルワーク等も含みます。
地域パターン分析──産業構造が格差を決める
テレワーク格差の最大の要因は産業構造です。
情報通信業や金融・保険業、専門・技術サービス業はテレワークに適した業種であり、これらの産業が集積する都市部ほど実施率が高くなります。東京都は情報通信業の事業所数が全国の約3割を占めており、テレワーク率が突出する構造的な背景があります。
反対に、農林漁業・製造業・建設業・医療福祉といった現場作業が不可欠な業種が中心の地域では、テレワーク実施率は必然的に低くなります。秋田県の第一次産業就業者比率は全国平均の約2倍であり、これが6.4%という低い実施率に直結しています。
首都圏の4都県(東京・神奈川・千葉・埼玉)がいずれも上位にあるのは、東京に本社を置く企業のテレワーク制度が近隣県の通勤者にも適用されるためです。通勤圏という観点では、テレワークの恩恵は「東京経済圏」に集中しているといえます。
副業率・転職率との関係──テレワーク可能な県ほど働き方が柔軟
テレワーク実施率と他の「働き方の柔軟性」指標を並べると、興味深いパターンが見えてきます。テレワーク実施率の1位・最下位の格差は6.2倍ですが、副業率は2.3倍(京都府7.8%〜宮崎県3.4%)、転職率は1.6倍(東京都5.4%〜愛媛県3.3%)と、テレワークの地域差が突出しています。
出典:e-Stat 就業構造基本調査上位県の顔ぶれを見ると、傾向として大都市圏がテレワーク率・副業率・転職率のいずれでも上位に入りやすい。東京都はテレワーク率1位(39.8%)かつ副業率2位(6.6%)。テレワークで通勤時間が浮けば、副業に充てる時間も生まれやすくなる可能性があります。
転職率も東京都(5.4%)と福岡県(5.4%)が同率1位です。テレワークが普及した都市部では、地理的制約が緩和されるため求人の選択肢が広がりやすくなります。
一方、テレワーク率が低い地方では「この地域で働ける仕事」が限られるため、転職も副業も選択肢が狭まります。テレワーク格差は単なる勤務形態の違いにとどまらず、キャリアの選択肢の格差にもつながっている可能性があります。
副業率ランキング 転職率ランキングNOTE
副業率1位の京都府(7.8%)は大学・研究機関の集積が背景にあり、テレワーク率(17.5%、8位)とは異なる要因が働いています。都市圏でテレワーク率と副業率が同時に高い県が多い一方、完全な一致ではありません。
まとめ
この記事で明らかになったテレワーク格差の構造を整理します。
テレワーク実施率は東京都39.8%に対し秋田県6.4%と、6倍以上の格差があります。上位は首都圏・大都市圏が独占し、下位は東北・四国・山陰に集中。産業構造の違いがこの格差の主因であり、情報通信業が集積する都市部ほど実施率が高くなります。
テレワーク可能な地域では副業率や転職率も高い傾向にあり、テレワーク格差は働き方全体の柔軟性の格差と連動しています。地方創生の観点では、テレワーク可能な仕事を地方に誘致することが、単なる勤務形態の改善にとどまらず、地域の労働市場全体の活性化につながる可能性を示唆しています。
この格差は自然に縮まるものではない。産業誘致・関係人口の拡大・デジタル専門職の地方移住支援のいずれも「テレワーク可能な仕事を地域に増やすこと」が前提条件になっており、どの政策が最も効果的かはこれからの実証が待たれる。
データ出典
本記事のデータはe-Stat(政府統計の総合窓口)を基に作成しています。